マシンの前後バランスについて


今回のDRIVERSEYEではマシンの前後バランスについてふれてみましょう。
マシンの前後バランスとは一言でいえばグリップのバランスの事です。これに影響を及ぼすのは、タイヤ種、前後の重心位置、上下の重心位置がほとんどの割合を占めます。そして微妙に影響するのが、ジオメトリー関係や、サスペンション類の硬さなどとなります。コーナーリングを決定づけるこの前後バランスを言葉で表現するときに用いるのが「アンダーステア」と「オーバーステア」となります。

アンダーステア

ステアリングを切りこんだ分しか曲がらない。またはステアリングを切りこんだ分よりも曲がらない状態です。コーナーリングスピードが遅くなります。またコーナーの脱出でスロットルを開けられない「待ち」の状態が発生します。

オーバーステア

ステアリングを切りこんだ分に対して曲がり過ぎる状態。またコーナーリング中にスロットルオンに過敏にリアタイヤが反応しテールスライドが大きい状態。オーバーステアが発生しているとやはりコーナーリングスピードが遅くなります。コーナー出口でのトラクションも不足し加速が鈍ります。

【解説】

アンダーステアオーバーステアとは発生する現象の事を言います。すなわち、マシンの事ではありません。一見アンダーステアが発生しているマシンでも走り方でニュートラルにもオーバーステアにもなります。アンダーとオーバーの発生原因と対策を次にまとめてみましょう。

アンダーステアの原因と対策】

アンダーステア発生の最も多い原因はフロントタイヤの荷重不足。コーナーの進入時に十分なブレーキングが出来ていないため、フロントタイヤに荷重が乗らない事でフロントグリップが不足しています。メリハリのある加速と減速で荷重を前後へコントロールすることが大切です。ターンインで出来るだけコーナー出口にマシンを向けてやることでそこからの加速が大きく変わります。
次に多いのはリアタイヤの引っ掛かりによるプッシングアンダーです。ステアを切りこんだ量に対してマシンはやや小さく曲がるのがニュートラルなコーナーリングです。この症状の原因はマシン的にはリアセクションの剛性過多。しなやかに動くリア部分を持たないと急激なテールブレイクなどの原因ともなります。また、減速しすぎる事でマシンの旋回の為のヨーイングがなくなってしまっていても、プッシングアンダーが発生します。マシンにコーナーの外側に振られる慣性を残し、前へ蹴り出す推進力と釣り合わせる事でマシンの中心軸での旋回がおこります。慣性を残す事によってリアタイヤは微妙に外側へスライドしステア量より若干曲がって行きます。これをコーナーのクリップまで保ちつつ出口ではほぼGフォースを残さないで加速していきます。
次にブレーキングをしない高速コーナーでのアンダーステアはどうなるのか?という事ですが、原因の中で多いのはステアリングの切りこむタイミングが極度の遅れている事です。コーナーの手前からゆっくりと微妙に切りこんで行く事でほぼ解消されるはずです。それでもアンダーステアが発生する場合はマシン的にフロントグリップが足りていない状態です。

オーバーステアの原因と対策】

オーバーステアを解消するために必要なことは、「リアのトラクション不足」なのか「リアがブレイク」するのかを見極めることです。トラクション不足はスロットルオンでリアタイヤがスルスルと外側へ滑りマシンが前に出ない状態です。これはホイールなどの緩みをまず疑うべきでしょう。また、リア周りで路面に何か干渉している場合も多くあります。またリアの剛性が柔らかすぎてもトラクション不足となります。マシン的な原因がほとんどです。
そしてリアのブレイクの原因ですが、ステアリングの切り過ぎ、またはフロントタイヤのグリップ過多が多く見られます。コーナー入り口でのリアブレイクはTバーが硬過ぎる。フロントタイヤがグリップしすぎる。リアタイヤが摩耗している。などが原因と考えられます。またコーナー出口でのリアブレイクはフロントキャンバーのつけすぎなどが原因です。

【アンダーオーバー】

コーナー進入時にきっちりとマシンの向きを変えきれておらず、コーナー出口につれてステアリングをより切りこみコーナーの後半でリアがスライドしオーバーステアが発生する現象です。主にドライバー技量の不足を指す時に用いる用語です。

【MISコメント】

アンダーステアオーバーステアについて解説してみましたが参考になりましたでしょうか?レーシングの世界ではよりアンダーステア傾向の強いマシンをニュートラルに走らせる事がドライバーの技量のモノサシとも言えます。荷重移動のコントロールで走るのがレーシングカーですので、フロントタイヤに頼らずコーナーリングすることを練習することが大切です。コーナーの入り口ではフロントが勝ち、出口では完全にリアが勝つというグリップバランスを実現させる為には、荷重移動以外の解決策はありません。ブレーキングが甘い為にコーナー入り口でフロントが逃げて曲がらない場合、フロントタイヤのグリップを上げる事を解決策とする場合がありますが、これは出口での加速やコーナー全体でのスピードを殺す原因となります。フロントタイヤはマシンに対して抵抗を発生させるアイテムと考えましょう。